Chapter 3 [演習課題②]生成AIで議事録を作成してみよう

学習時間の目安1時間

会議の文字起こしデータや、会話を記録したメモ書きなどを生成AIに入力することで、内容が整理された議事録を作成することが可能です。多少の誤字脱字が入っていても、問題なく内容を整理して議事録を作成できます。

最近では「tl;dv (https://tldv.io/ja/) 」といった、会議を動画収録し、会議で話された内容を要約してくれる便利なツールも登場しております。それらのツールは便利である一方で、状況によっては、ただ会議の内容を要約した議事録ではなく、会議で話された内容からネクストアクションやToDoリストなどを設定したい場合や、新人社員向けに分かりやすく補足を入れたい場合もあるかと思います。ここでは、会議での会話内容が文字起こしされているという前提の元、そのデータを活用して、こちらの意図を汲み取った議事録を生成するプロンプトを学んでいきましょう。

例:議事録の作成

想定シーン あなたの会社では、会議の文字起こしツールを導入しました。これにより、議事録の記載漏れや認識の齟齬を防ぐことができます。しかし、会議の内容がすべて文字起こしされてしまうため、長時間の会議では要点やToDoリストを整理することが難しいのが課題です。

それでは、仮に会議の文字起こしを下記のように実行できたとして、この文字起こしデータをもとに議事録・サマリを作成しましょう。

佐藤取締役: 皆さん、お久しぶりです。今朝の通勤は大変でしたよ。電車が混雑していて、ぎゅうぎゅう詰めでしたから。

鈴木取締役: そうだったんですね。私は始発駅から乗ったので、座れたんですよ。ラッキーでした。

伊藤取締役: 私も電車が混んでいましたよ。でも、最近は本を読む時間ができて、むしろ嬉しいです。

高橋取締役: 皆さん、通勤大変そうですね。私は最近、自転車通勤にしたんですよ。運動不足解消になるし、結構快適ですよ。

田中社長: おはようございます。皆さん、通勤話で盛り上がっていますね。でも、そろそろ会議を始めましょうか。

(会議開始)

田中社長: えー、それでは、2024年度の当社の経営方針について議論していきたいと思います。あの、昨年度の業績について鈴木さんから報告をお願いします。

鈴木取締役: かしこまりました。えーと、昨年度の売上高は前年比5%増の120億円、営業利益は8%増の15億円となりました。各事業部門の業績としては、主力のITソリューション事業が堅調に推移し、売上高は前年比7%増の80億円となりました。一方で、新規参入した環境エネルギー事業は、あの、初期投資の影響もあり、2億円の赤字となっています。
総じて、コロナ禍からの経済回復を追い風に、まあ、順調な業績となったと言えます。しかし、原材料価格の高騰や人件費の増加など、コスト面での課題も見えてきました。

田中社長: 鈴木さん、ありがとうございました。続いて、営業の現場の声を佐藤さんからお願いします。

佐藤取締役: はい、営業の現場では、お客様のDXニーズの高まりを強く感じています。クラウドやAIを活用したソリューション提案が奏功し、大型案件の受注にも繋がっています。えーと、一方で、競合他社との価格競争は年々激化しており、正直、値下げ圧力は非常に強くなっています。差別化を図るための、独自サービスの強化が急務と考えています。
また、従来のシステム保守の分野では、あの、人手不足が深刻化しており、リソースのシフトが難しい状況です。営業としては、より付加価値の高い領域にシフトしていく必要性を感じています。

田中社長: なるほど、佐藤さんの報告にもあったように、事業環境は大きく変化しつつあります。この変化をチャンスと捉え、スピード感を持って戦略を実行していくことが重要ですね。人事面では伊藤さん、総務の観点からは高橋さん、何か補足はありますか?

伊藤取締役: はい、人材面では、即戦力となるIT人材の獲得競争が激化しています。当社としては、新卒採用と並行して、経験者採用にも注力することが必要と考えます。加えて、あの、リスキリングの取り組みも強化すべきでしょう。社内でのIT人材育成プログラムを拡充し、事業変化に合わせた人員シフトを柔軟に行える体制を整えたいと思います。

高橋取締役: 情報セキュリティの観点から補足させていただきます。えーと、テレワークの浸透に伴い、セキュリティリスクが高まっているのが現状です。営業秘密の漏洩防止に向けて、システムや社内ルールの整備を進めると同時に、社員の意識向上に向けた、あの、啓蒙活動にも注力したいと考えています。

田中社長: 伊藤さん、高橋さん、重要な指摘をありがとうございます。これらの課題を踏まえ、2024年度の経営方針について議論を進めていきたいと思います。

(中略 - 会議の内容が続く)

田中社長: えーと、次に、営業戦略についてもう少し掘り下げて議論したいと思います。佐藤さん、先ほどの説明で、独自サービスの強化が重要とおっしゃっていましたが、具体的にはどのようなサービスを想定していますか?

佐藤取締役: はい、あの、現在、当社の強みであるクラウドインテグレーションを軸に、AI活用サービスを開発中です。お客様の業務効率化や、意思決定支援などに役立つサービスを提供していきたいと考えています。えーと、また、IoTソリューションにも注力し、製造業や物流業界向けのサービス展開を図ります。

田中社長: なるほど、AIとIoTを活用した新サービスですね。開発の進捗はどうですか?

佐藤取締役: あの、AI活用サービスについては、プロトタイプが完成し、一部のお客様に試験的に提供を始めています。IoTソリューションは、まだ企画段階ですが、来期中の提供開始を目指して、開発を加速させていきます。

田中社長: 良いですね。新サービスの開発は、当社の成長に不可欠です。是非、スピード感を持って進めてください。えーと、鈴木さん、新サービス開発に向けた投資計画はどのように考えていますか?

鈴木取締役: はい、新サービス開発には、相応の投資が必要になると想定しています。来期の投資額は、前期比で20%増の10億円を計画しています。主に、開発人員の増強と、開発インフラの整備に充てる予定です。あの、一方で、既存事業の効率化によるコスト削減も進め、投資原資を確保していきます。

田中社長: 投資計画については、もう少し詳細を詰める必要がありそうですね。鈴木さんと佐藤さんで、あの、投資対効果を精査していただき、次回の会議で改めて報告をお願いします。

鈴木取締役・佐藤取締役: かしこまりました。

田中社長: 次に、人材戦略について議論しましょう。伊藤さん、先ほどおっしゃっていた、経験者採用とリスキリングについて、もう少し具体的に説明していただけますか?

伊藤取締役: はい、経験者採用については、まずは、即戦力となるクラウドエンジニアやデータサイエンティストの獲得に注力します。専門サイトや人材エージェントを活用し、優秀な人材の発掘に努めます。えーと、また、リファラル採用も強化し、社員の人脈を活用した採用活動も進めていきます。

リスキリングについては、社内のIT人材育成プログラムを拡充します。クラウド技術やAI、IoTなどの分野で、社外の教育機関と連携した研修プログラムを用意し、社員のスキルアップを図ります。あの、また、OJTを通じた育成にも力を入れ、先輩社員によるメンタリング制度などを導入していきたいと考えています。

田中社長: 伊藤さんの提案、非常に良いと思います。人材は当社の最大の資産です。採用と育成、両面から強化していきましょう。えーと、高橋さん、リスキリングを進める上で、セキュリティ面での課題はありませんか?

高橋取締役: はい、リスキリングを進める上では、社外の教育機関とのデータのやり取りなどで、セキュリティリスクが発生する可能性があります。あの、教育機関との間で、適切な情報管理体制を構築する必要があるでしょう。また、社員のスキルアップに伴い、機密情報へのアクセス権限の見直しなども必要になってくると思います。

田中社長: セキュリティ面での課題は重要ですね。高橋さんと伊藤さんで、リスキリングに関するセキュリティ対策を検討していただき、次回の会議で報告をお願いします。

高橋取締役・伊藤取締役: かしこまりました。

田中社長: 他に、経営方針に関して、何か議論すべき点はありますか?

田中社長: 皆さん、活発な議論をありがとうございました。本日の議論を踏まえ、経営方針の詳細を詰めていきたいと思います。変化の時代を勝ち抜くためには、スピードと柔軟性が不可欠です。全社一丸となって、戦略の実行に邁進しましょう。
本日の議論を踏まえ、経営方針の最終案を取りまとめます。改めて皆さんにはご確認いただき、年度初めの全社会議で社員の皆さんにお伝えする予定です。
活発なご議論をありがとうございました。これにて会議を終了します。お疲れさまでした。

(雑談)

佐藤取締役: お疲れさまでした。今日の議論を踏まえて、営業戦略の具体案を練ってみます。

鈴木取締役: お疲れさまでした。財務の観点からも、戦略の実現可能性を検討していきたいと思います。

伊藤取締役: 人事戦略についても、具体的なアクションプランを作成します。社員の成長が、会社の成長に繋がるよう尽力します。

高橋取締役: セキュリティ面での施策も、スピード感を持って進めていきます。社員の意識改革も含めて、しっかり取り組んでいきたいと思います。

田中社長: 皆さんの熱意が伝わってきます。今日はありがとうございました。

上記のように、文字起こしでは会話の内容が整理されておらず、ただ文字起こししただけでは内容を一目で把握することはできません。今回は、この文字起こしデータをもとに、各登場人物の発言内容のまとめと、TODOリストに落とし込むためのプロンプトを作成してみましょう。

※ なお、今回作成する議事録は発言要約、TODOリストが確認できる簡易的なものとします。

プロンプト作成時のポイント

  • 手順を明確に指示すること
  • 今回はアウトプットの内容が明確であるため出力形式に明記すること
プロンプト#役割
あなたは文字起こしデータの内容を分析し、登場人物の発言をまとめ、TODOリストを作成する担当者です。

#文脈
この作業は、会議で議論された内容を整理し、各登場人物の発言をまとめ、具体的なアクションアイテムを明確にすることを目的としています。

#ゴール
文字起こしデータから登場人物の発言内容を要約し、TODOリストを作成すること。

#変数
【文字起こしデータ】: 分析対象の文字起こしデータ
【登場人物】:文字起こしデータに登場する人物のリスト
【発言要約】: 各登場人物の発言内容の要約
【TODOリスト】: 議論された内容から抽出されたアクションアイテム

#制約事項
– 発言要約は、各登場人物の主張や提案を正確に反映すること。
– TODOリストは、具体的で実行可能なアクションアイテムを含むこと。
– 文字起こしデータの内容を客観的に分析し、偏りのない要約とTODOリストを作成すること。

#手順
[C1] 【文字起こしデータ】を読み込み、【登場人物】のリストを作成する。
[C2] 各【登場人物】の発言内容を分析し、【発言要約】を作成する。
[C3] 【発言要約】から、具体的なアクションアイテムを抽出し、【TODOリスト】を作成する。
[C4] 【発言要約】と【TODOリスト】を統合し、最終的な要約とTODOリストを完成させる。
[C5] 完成した要約とTODOリストを確認し、必要に応じて修正や改善を行う。

#出力形式
1. 登場人物ごとの発言要約
2. TODOリスト

#フィードバック
作成した要約とTODOリストを以下の観点から評価し、必要に応じて修正や改善を行ってください。
1. 各登場人物の発言内容が正確に要約されているか。
2. TODOリストが具体的で実行可能なアクションアイテムを含んでいるか。
3. 文字起こしデータの内容が偏りなく分析されているか。
4. 要約とTODOリストが全体的に読みやすく、わかりやすい形式になっているか。

#会議の発言内容の文字起こしデータ
(文字起こしされた会話データを貼り付ける)
ChatGPTの出力例## 発言要約

### 佐藤取締役
– **通勤話**: 通勤は大変で、電車が混雑していた。
– **営業報告**: 顧客のDXニーズの高まりを感じ、クラウドやAI活用の提案が成功し、大型案件を受注。競合他社との価格競争が激化しており、独自サービスの強化が急務。
– **課題と対策**: システム保守の人手不足が深刻であり、付加価値の高い領域へのシフトが必要。
– **新サービス開発**: クラウドインテグレーションを軸に、AI活用サービスやIoTソリューションを開発中。AIサービスのプロトタイプを試験的に提供開始し、IoTソリューションは企画段階。

### 鈴木取締役
– **通勤話**: 始発駅から乗り座れた。
– **業績報告**: 売上高が前年比5%増の120億円、営業利益が8%増の15億円。ITソリューション事業が堅調だが、新規の環境エネルギー事業は初期投資で2億円の赤字。
– **新サービス投資計画**: 新サービス開発に前期比20%増の10億円を計画。既存事業の効率化によるコスト削減も併進。

### 伊藤取締役
– **通勤話**: 電車が混雑していたが、読書時間が増え嬉しい。
– **人材戦略**: 即戦力のIT人材の採用競争が激化している。新卒採用と経験者採用に注力し、リスキリングプログラムを強化。社員のスキルアップを図る。
– **リスキリング**: 社外教育機関と連携した研修プログラムやOJTによる育成を進める。

### 高橋取締役
– **通勤話**: 自転車通勤に切り替え、運動不足解消と快適さを実感。
– **セキュリティ対策**: テレワークの普及でセキュリティリスクが増加しているため、システムやルールの整備と社員の意識向上を推進。リスキリングに伴うセキュリティリスク管理も必要。

### 田中社長
– **司会進行**: 各取締役の報告をまとめ、2024年度の経営方針を議論。各方面からの補足を受け、経営戦略を具体化するためのディスカッションを進行。全社一丸での戦略実行を強調。

## TODOリスト
1. **経営方針の詳細策定**:
 - 田中社長: 各取締役の報告を基に経営方針の最終案をまとめ、年度初めの全社会議で発表。
2. **営業戦略の具体案作成**:
 - 佐藤取締役: 独自サービス強化の具体策を検討し、大型案件獲得に向けた営業戦略を具体化。
3. **新サービス開発の加速**:
 - 佐藤取締役: AI活用サービスとIoTソリューションの開発を推進。プロトタイプの提供状況を報告。
4. **投資計画の詳細詰め**:
 - 鈴木取締役: 新サービス開発の投資対効果を精査し、具体的な投資計画を次回会議で報告。
5. **人材採用とリスキリングの強化**:
 - 伊藤取締役: 経験者採用の具体策とリスキリングプログラムの強化策を検討し、実施計画を次回会議で報告。
6. **セキュリティ対策の強化**:
 - 高橋取締役: リスキリングに伴うセキュリティリスク管理策を検討し、教育機関とのデータ管理体制の構築を進める。
7. **人事戦略の具体策作成**:
 - 伊藤取締役: IT人材育成プログラムの拡充とメンタリング制度の導入計画を作成し、次回会議で報告。
8. **財務戦略の検討**:
 - 鈴木取締役: 戦略実行に向けた財務の視点からの実現可能性を検討し、具体的な計画を作成。
9. **セキュリティ意識向上活動の推進**:
 - 高橋取締役: 社員のセキュリティ意識向上に向けた啓蒙活動を計画し、実施。

[演習課題②]生成AIで新人社員向けにわかりやすい議事録を作成しよう

【想定シーン】 社内事情に詳しくない新人社員に役員会議で話された内容を分かりやすく伝えたいです。 「例:議事録の作成」で作成した議事録では「発言要約」と「TODOリスト」のみの簡易的な議事録を作成しましたが、本演習課題で作成する議事録では「会議概要」「議題」「決定事項」「専門用語解説」「会議の要約」「次回の議題」が記載されている議事録を作成しましょう。

【実施手順】 1.新人社員のレベルに合わせた議事録を作成しましょう ※先の例で使用した会話データと同じデータを利用してください

【提出方法】 演習課題の入力先シート:「提出ファイル」>「Lesson7_[演習課題②]生成AIで新人社員向けにわかりやすい議事録を作成しよう」 提出方法:Slackでメンターをメンションの上、上記シート右上に記載の「提出テンプレート」とあるセルをコピーし、提出してください。

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