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1-1Chapter 1-1 生成AIが変える仕事のかたち

みなさん、こんにちは。ここから始まる講座では、生成AIが私たちの仕事をどう変えていくのか、そしてその波に乗るための基礎を学びます。第1章・最初のトピックは「生成AIが変える仕事のかたち」です。

Slide 2 [生成AIとは?]

スライド内容(例)

  • テキスト・画像・音声などを「生み出す」AI
  • ChatGPT、Claude、Microsoft Copilot などが代表例
  • 2022年以降、急速に普及

生成AIとは、簡単にいうと「文章」や「画像」、「表」や「音声」などを、“新しく自動で作り出す” AI のことです。

今までは、AIというと「分類する」「予測する」といった作業が得意でしたが、生成AIは一歩進んで、人間のように自然な文章を書いたり、イラストを描いたりできるのが特徴です。

例えば、ChatGPT に「上司へのお礼メールを書いて」と入力すると、数秒で丁寧なメール文が出てきます。あるいは、画像生成AIに「夕焼けの海とヨット」と伝えれば、それに沿った画像を自動で描いてくれます。

これまで私たちが“手作業”で作っていたものを、AIが「代わりに作る」ことができる。これが生成AIのすごさです。

代表的なツールとしては、ChatGPT のほかに、Claude や Google Gemini、Microsoft の Copilot(コパイロット)などがあり、今も急速に進化を続けています。

つまり、生成AIは「AIが単なる道具から、共同作業するパートナーへと変わりつつある」ということを意味しています。

Slide 3 [急激な普及スピード]

スライド内容(例)

  • ChatGPT:公開5日で100万人
  • SNSより速く普及したテクノロジー
  • 2025年には世界で10億人が利用すると予測も

生成AI、特に ChatGPT の登場は、まさに“テクノロジーの大変化”を象徴しています。

ChatGPT が公開されたのは 2022年11月末。わずか 5日でユーザー数100万人 を突破しました。これは、過去のどんなITサービスと比べても異例の速さです。

たとえば、Instagram が100万人を達成するのに2ヶ月、Netflix では3年かかっています。
ChatGPTはその何倍ものスピードで世界中に広がりました。

また、たった2ヶ月でユーザー数が1億人を超えたという記録もあり、これは スマートフォンやSNSを超える勢い だと言われています。

企業の導入も急激に進んでおり、大手IT企業や金融機関、製造業、教育機関などでもAI活用が日常になりつつあります。

一部の調査では、2025年には世界で10億人以上が生成AIを使っていると予測されています。もはや、「一部の人だけの話」ではなく、全ビジネスパーソンにとって“当たり前の技術”になろうとしているのです。

このスピードの背景には、2つの理由があります。

1つ目は、「誰でもすぐに使える」こと。専門知識やインストールは不要で、ブラウザからすぐアクセスできます。

2つ目は、「すぐに成果が見える」こと。数秒で文章が出力されたり、資料作成が一瞬でできるので、体験してみるだけで“これは便利だ”と実感できるのです。

つまり、生成AIは「一部のIT部門」だけのものではなく、すべての職種・すべての社員に関係する技術に変わりつつあります。

今このタイミングでAI活用に触れておくことは、時代の流れに乗るだけでなく、今後の働き方の“前提条件”に備えるという意味でも非常に大切です。

Slide 4 [業務インパクト三つの視点]

スライド内容(例)

  1. 速度 — 作業時間を1/10に短縮
  2. — ミス削減・表現の統一
  3. 発想 — 新しい視点を提供し、ブレストにも強い

ここでは、生成AIが業務にもたらすインパクトを 3つの視点 で整理してみましょう。

それが、**「速度」「質」「発想」**です。

まず1つ目、「速度」です。
生成AIの最大の特徴は「速さ」です。
たとえば、5分〜10分かけていた社内メールの下書きが、プロンプトを入力すれば30秒〜1分で完成
します。

また、会議後に議事録を作成する場合でも、AIに要点を整理させれば、10分でまとめていたものが2分以内で済むようになります。

こうした「時短効果」は、積み重なると1週間で数時間、1ヶ月で1日分の作業時間に相当することもあります。

**次に2つ目、「質」**です。
生成AIは誤字脱字や語調のブレを自動で整えてくれるため、誰が書いても一定の品質を保つことができます。

たとえば、ある社員が書いた報告書が「上から目線」で感じが悪い、というような問題も、AIに「丁寧に」「敬語で」と指示することで簡単に修正可能です。

また、表現や構成のバリエーションを提案してくれるため、自分の言葉をより“伝わる形”に整えることもできます。

そして3つ目、「発想」です。
人間がひとりで考えると視点が固定されがちですが、AIに相談することで自分にはない発想や切り口
が得られます。

たとえば、「この商品を20代向けにもっと魅力的に伝える方法は?」と聞くと、キャッチコピー案や企画案などが次々に出てきます。

ブレインストーミングの相手として使ったり、発想に詰まったときの“ヒント出し係”としても非常に有効です。

このように、生成AIは単なる文章生成ツールではなく、私たちの仕事の「スピード」「品質」「思考力」を底上げしてくれる補助輪のような存在です。

「書く時間が短くなった」だけでなく、「そもそも、今までより質が上がった」「違う視点から考える習慣ができた」など、目に見えにくい部分にも良い影響を与えてくれます。

この3つの視点でAIの可能性を見ていくことで、どの業務で使えば効果的かが見えてきます。次の章からは、実際の業務にどう活かすかをより具体的に見ていきましょう。

Slide 5 [具体例:社内文書 × 生成AI]

スライド内容(例)

  • 旧:1通15分 → 新:3分(下書き+見直し)
  • 品質のばらつきも減少、レビューがラクに
  • 「迷わない・急がない・質も落とさない」文書作成へ

ここでは、生成AIを使って実際に業務がどう変わるのかを、身近な例で見てみましょう。

たとえば、「上司に送る社内メール」を考えてみてください。
内容は、打ち合わせ日程の調整や報告事項、依頼事項など、比較的短い文章が多いと思いますが、意外と時間がかかりますよね。

「敬語が合っているか?」「失礼な表現になっていないか?」「もっと簡潔に書けないか?」といったことを考えながら書くと、1通書くのに10〜15分かかることもあります。

ですが、生成AIを使えばどうでしょうか。

たとえば、ChatGPT に
「上司に、明日の打ち合わせ資料を今日中に送るという内容のメールを書いてください」
と入力すれば、わずか数秒で下書きが完成します。

あとは、自分の業務や相手に合わせて少しだけ修正すれば、最終的な完成まで3分以内で済むことも珍しくありません。

さらに効果があるのは、品質のばらつきを減らせることです。

社内でよくある課題として、「人によってメールの文章に差がある」「誰が書いたかで伝わり方が違う」という声があります。
生成AIを使えば、トーンやフォーマットを統一しやすくなり、読み手にとってもストレスのない文書が作れるようになります。

その結果、メールを受け取った側――たとえば上司や関係者も、内容をスッと理解できるようになり、確認や修正のやり取りが減るのです。

このように、生成AIを社内文書に活用することで、書く人も読む人もラクになる。
まさに、「迷わない・急がない・でも、質も落とさない」文書作成が可能になります。

まずは、自分の業務でよく使う「定型文」や「繰り返し作成している文書」から、AIに下書きを任せてみてください。
そこから“時間のゆとり”と“頭の余白”が生まれ、より本質的な仕事に集中できるようになるはずです。

Slide 6[まずAIでできるか?」のマインドセット]

スライド内容(例)

  • 「この作業、AIでやれるかも?」と考える習慣
  • 小さな成功体験の積み重ねが社内文化を変える
  • 自分だけの“勝ちパターン”を持つことが第一歩

生成AIを使いこなすうえで、最も大切なのは「技術」ではなく「考え方」、つまり “マインドセット” です。

これからの働き方で求められるのは、「この作業、もしかしたらAIに任せられるかも?」とまず考えてみる習慣です。

たとえば、日常業務でこんな場面に出くわしたことはありませんか?

  • 報告書の冒頭をどう書き出すか迷っている
  • 社内向けの連絡文がうまくまとまらない
  • 会議後に議事録をつくる時間がない

こうした場面で、「よし、いったんAIに書かせてみよう」と発想を切り替えるだけで、ぐっと効率が上がります。

最初からうまくいかなくても大丈夫です。
大切なのは、小さな“時短成功体験”を積み重ねること。

たとえば、
「今日は1通だけ、AIにメールの下書きをさせてみよう」
「社内報のタイトル案を3つAIに出させてみよう」
といった、本当に小さなことからでOKです。

そうして“うまくいった例”が1つでもできると、自分の中に「勝ちパターン」ができます。

さらにそれをチームで共有すれば、「こんな使い方あるんだ!」という気づきが広がり、社内全体の活用文化にもつながります。

重要なのは、「完璧に使いこなすこと」ではなく、「まず試してみること」。

AIを使いこなす人と、そうでない人の違いは、知識の差よりも“思考のクセ”の差です。

これからの時代、まずは一歩前に出て、「この業務、AIでやってみようかな?」というクセを、自分の中に育てていきましょう。

次回は、生成AIを実際に業務で使うときに避けて通れない「社内ルールとリスク管理」について学んでいきます。

Slide 7 [本日のまとめ]

スライド内容(例)
✅ 生成AIは「速度・質・発想」に大きなインパクトを与える
✅ 完璧に使いこなす必要はない、まず「やってみる」こと
✅ 小さな成功体験が活用の第一歩
🔜 次回:「社内で安全に使う」ためのルールと考え方を学ぶ

ここまで、生成AIとは何か、そして私たちの仕事にどう影響を与えるのかを一緒に見てきました。

本日のポイントは、大きく3つあります。

1つ目は、生成AIは私たちの仕事において「速度」「質」「発想」という3つの面で大きなインパクトをもたらす存在であるということです。

時間がかかっていた業務をスピードアップし、表現のばらつきを減らして質を整え、さらには発想を広げてくれる。これは、単なる便利ツールというより、**新しい“仕事のパートナー”**ともいえる存在です。

2つ目は、「使いこなさなきゃ…」と構えなくても大丈夫、ということ。

最初はうまく使えなくても構いません。重要なのは、「まず試してみる」こと。AIにちょっとやらせてみて、うまくいかなければ手直しする。それを繰り返すうちに、自分なりの使い方が見えてきます。

3つ目は、小さな成功体験を重ねていくことが、AI活用の第一歩だということ。
たとえば「このメール、AIに作らせてみたら3分で書けた」など、小さな「できた!」の積み重ねが、やがてチーム全体の活用文化へとつながっていきます。

今日の内容を通じて、AIは決して「専門職の人だけが使うもの」ではなく、すべてのビジネスパーソンにとって身近なツールであるということが、少しでも伝わっていれば幸いです。

次回は、実際にAIを仕事で使っていくうえで重要な、「社内での使い方のルール」や「リスク管理」についてお話ししていきます。

安全に、そして安心してAIを使うための土台づくりです。引き続き、一緒に学んでいきましょう。

Chapter 1-2 得意/苦手を見抜く:生成AIの限界

Slide 2 [得意なこと①:定型文の生成]

スライド内容(例)

  • 社内メール・議事録・報告書など
  • 決まった構造のある文章に強い
  • テンプレート化で活用効果アップ

生成AIの最も得意とされる分野のひとつが、「定型文の生成」です。

定型文というのは、ある程度“型”が決まっている文章のことです。たとえば、

  • お礼メール
  • 会議後の議事録
  • 月次報告書の冒頭文やまとめコメント
    などが該当します。

こうした定型文は、ある程度パターンが決まっているため、AIにとって非常に扱いやすく、人間の負担を大きく軽減できるポイントでもあります。

たとえば、「上司に対するお礼メールを書いて」とAIに入力すれば、数秒で適切な文面が出てきます。
あるいは、「会議の要点を議事録のフォーマットでまとめて」と指示すれば、タイトル・出席者・議題・決定事項などの項目が揃った体裁で出力されます。

さらに一歩進めて、社内でよく使う定型フォーマットをテンプレート化しておくことで、使い回しも簡単になります。
たとえば、「いつも同じ流れの議事録」「月末に出す進捗報告書」などは、あらかじめAIに“この形でまとめて”と指示しておけば、あとは内容を差し替えるだけで済むようになります。

人によって文体や表現に差が出やすい業務文書も、AIを通すことで文調が整い、上司や関係者にとっても読みやすくなるという効果も期待できます。

つまり、AIは単に「速く書ける」だけでなく、「品質のばらつきを減らす」役割も果たしてくれるのです。

こうした定型文の生成は、AI活用の入門編としても最適ですので、ぜひここから試してみてください。

Slide 3 [得意なこと②:要約・言い換え]

スライド内容(例)

  • 長文 → 3行要約
  • 難しい言葉 → やさしい表現に変換
  • 「社内向けに」「小学生にもわかるように」など、調整も可能

生成AIが得意なことのひとつに、「文章の要約」と「言い換え」があります。

たとえば、5ページにわたる会議資料の要点を、3行程度にまとめてほしいとき。あるいは、難しい報告書を、もっとわかりやすく言い直してほしいとき。そんな場面で、生成AIはとても役立ちます。

具体的には、ChatGPTに「この文章を3行で要約してください」と入力するだけで、内容を短く整理してくれます。もちろん、ポイントを抜き出して箇条書きにしたり、「上司向けに」「初学者向けに」といった条件を加えることもできます。

また、「この文をやさしい日本語にして」と頼めば、専門用語や硬い表現を避けて、より読みやすく整えてくれます。たとえば、「本件は業務効率化の観点から再検討が必要である」という文が、「この仕事はもっと早く終わらせる方法を考えた方がよさそうです」といった柔らかい言葉に変わります。

このように、AIは“自分ではどう書いたらいいか迷う”という時の心強いパートナーになってくれますし、読み手に応じて表現を使い分けたいときにもとても便利です。

要約や言い換えは、特にメール・議事録・報告書など、どの職種でも頻繁に使う場面が多いため、AIの強みを実感しやすいタスクといえるでしょう。

Slide 4 [得意なこと③:アイデア出し]

スライド内容(例)

  • ブレインストーミングの相手になる
  • 新しい視点・切り口を補ってくれる
  • 発想を広げる “相談相手” として有効

生成AIが得意とする、もうひとつの分野が「アイデア出し」です。

人間同士でブレスト(ブレインストーミング)をするときと同じように、AIに相談することで、自分では思いつかなかった視点や表現、切り口を得ることができます。

たとえば、「この新サービスのキャッチコピー案を5個出してください」とか、「20代向けの福利厚生アイデアをいくつか考えてください」と聞くと、すぐに複数の提案を返してくれます。

特に役立つのが、「出すのは簡単だけど、1人で考えると煮詰まる系」の作業です。たとえば、ブログのタイトル案、イベント名、メールの件名、商品アイデアの方向性など。

もちろん、AIが出してくれたアイデアをそのまま採用する必要はありません。でも、「あ、そういう方向性もあるのか」とか、「これは軸を変えれば使えそうだ」といった形で、発想の種として活用できます。

また、AIは疲れませんし、何度頼んでも文句を言いません。たとえば「もっとカジュアルに」とか、「関西弁でふざけた感じで」といった細かい指示にも対応してくれます。

つまり、生成AIは「発想に詰まったときの相談相手」として、とても優秀なツールです。実務で“なんかうまく出てこない…”という時は、ぜひ気軽にAIに声をかけてみてください。

Slide 5 [苦手なこと①:事実確認・最新情報]

スライド内容(例)

  • AIはもっともらしく「ウソをつく」ことがある
  • 数字・固有名詞・法律・日付はとくに注意
  • “あってそう”でも必ず自分で確認を!

ここからは、生成AIの「苦手なこと」を見ていきます。

最初に押さえておきたいのは、“事実確認や最新情報”は生成AIに任せてはいけない、という点です。

実は、AIは「もっともらしいウソ」を平気で出してきます。これを「ハルシネーション(幻覚)」と呼びます。

たとえば、「2024年の最新の法律改正について教えて」と聞くと、実際に存在しない改正案を、それっぽい文章で答えることがあります。

また、「この商品って何年発売ですか?」と聞いても、ありそうな年を“それっぽく”返してくることもあります。でも、それが本当に正しいかどうかは分かりません。

特に注意が必要なのは、次のような内容です。

  • 数値や統計データ
  • 法律・契約・規則
  • 固有名詞(人名・会社名・製品名など)
  • 日付や年号などの“時系列”情報

こういった情報を使うときは、必ず自分で公式なソースを確認することが必要です。AIは辞書でも検索エンジンでもありません。あくまで「それっぽく文章を作る機械」だということを忘れないでください。

つまり、「AIに言われたからこう書いた」は通用しません。業務上のミスを防ぐためにも、事実確認が必要な場面では、AIは“参考程度”にとどめて、最後は必ず自分で確かめるようにしましょう。

Slide 6 [苦手なこと②:長期的な推論・判断]

スライド内容(例)

  • 「この施策は成功するか?」→AIは曖昧に回答
  • 複雑な条件を比較して“決める”のは人間の役割
  • 判断を丸投げしないことが大事

生成AIがもうひとつ苦手とするのは、「長期的な推論」や「最終的な判断を下すこと」です。

たとえば、あなたがマーケティング担当だったとして、「このキャンペーンは成功しそうか?」とChatGPTに聞いたとします。するとどうなるか?

AIは、「ターゲット層が合っていれば成功する可能性があります」や、「コンテンツが魅力的であれば効果が期待できます」といった、“一見それっぽいけど中身のない”回答を返してくることがあります。

なぜこうなるかというと、生成AIは「条件を総合的に判断して結論を出す」ことが苦手だからです。

現実の仕事では、コスト・リスク・時間・関係者の意見など、複数の要素を比較して「何を選ぶか」を決める必要があります。でも、AIには“責任”や“文脈理解”の感覚がありません。

つまり、「この判断、AIに任せていいのかな?」と迷ったときは、基本的には “NO” と思っておいた方が安全です。

たとえば、プロジェクトの進め方、採用可否の判断、顧客対応方針の決定などは、AIの助言を参考にしながらも、最後は人間が責任をもって決める必要があります。

AIはあくまで「考えるヒントをくれる存在」であり、決断の責任は自分にある――という意識がとても重要です。

Slide 7 [苦手なこと③:感情や倫理への配慮]

スライド内容(例)

  • AIは「空気を読む」ことができない
  • 表現が失礼・冷たい・無神経になる可能性
  • 個人情報・ハラスメント表現にも無自覚

生成AIが苦手なことの3つ目は、「感情や倫理への配慮」です。

たとえば、人間同士なら自然に気をつけるような、“言い方”や“空気の読み方”といったものを、AIはほとんど理解できません。

たとえば、「上司への謝罪メールを書いて」とAIに頼んだとします。
すると、内容自体は正しくても、どこか冷たかったり、謝罪のトーンが足りなかったりすることがあります。

あるいは、人事評価コメントや部下へのフィードバックなど、人間関係に関わる文書では、AIが提案した表現が 意図せず傷つける表現になってしまう こともあります。

また、もうひとつ気をつけなければいけないのが「個人情報」や「センシティブな表現」です。

AIは過去の大量の文章をもとに文を生成しますが、その中には古い価値観や、差別的な表現が混ざっていることもあります。
たとえば、性別や年齢に偏見のある表現、職業や国籍に関する無意識の決めつけなどが、知らないうちに文中に入り込んでしまうことがあるのです。

このようなリスクを避けるためにも、AIの出力をそのまま使わず、人間の目で必ず確認することが必要です。特に社内外に送る正式な文書では、倫理的な観点からのチェックが重要になります。

AIは論理的で便利ですが、“人の気持ち”や“関係性の温度感”には鈍感です。そうしたデリケートな部分は、私たち人間の役割として残る――ということを、覚えておきましょう。

Slide 8 [まとめ:正しく期待する]

スライド内容(例)
✅ AIには得意な役割と苦手な役割がある
✅ 判断や責任は人間が担う
✅ 「まずAIでできるか?」という思考習慣が第一歩
次回:社内でAIを安全に使うルールを学ぶ

ここまで、生成AIの「得意なこと」と「苦手なこと」を見てきました。

ポイントは、AIは何でもできる“万能な存在”ではないということです。

要約・文書作成・アイデア出しといった、構造化された反復作業はAIがとても得意です。
しかしその一方で、事実確認、判断、感情配慮といった、人間にしかできない領域は残っています。

つまり、AIを“人間の代わり”として使うのではなく、「この作業、AIで手助けできないかな?」という発想で一緒に働く、というスタンスが重要になります。

AIの役割を正しく理解しておけば、無理な期待や誤用を避けられ、失敗も防げます。

そしてなにより、生成AI活用の第一歩は、「この作業、AIに任せられないかな?」と日々の業務の中で“問いかけるクセ”をつけることです。

完璧を求める必要はありません。まずはひとつ、自分の業務でAIに手伝わせてみること。そこから活用の幅は広がっていきます。

次回は、生成AIを社内で安全に使っていくためのルールや、よくあるリスクについて学んでいきます。ここからが、実践のスタートです。

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