Chapter 2 社内報告の進め方

学習時間の目安1.5時間

社内報告の目的と重要性

適切な報告を社内で実施することで、上司は部下の業務状況を把握し、必要な支援を行うことができます。また、組織全体の情報共有が促進され、全員が最新の状況を理解し、連携して問題解決に取り組むことができます。

自分の行動を「可視化」しチームで「情報共有」することは、業績を上げるために非常に重要です。 また、定期的な社内報告も、組織全体の生産性向上を図るうえで重要なプロセスです。

分かりやすい社内報告書の作成

社内報告を行う際、一目で伝えたいことが分かる報告書を作成することは重要です。簡潔かつ明確なメッセージを伝え、聞き手の興味やニーズに合わせて内容を調整する必要があります。基本的には以下の3つの要素から構成されます。

  • 導入: 報告の目的と背景を記載します。
  • 本論: 成果、課題、分析結果、提案など、報告の主要な内容を詳細に記載します。
  • 結論: 主要なポイントを要約し、次のステップやアクションプランを記載します。

わかりやすい社内報告を行うには、上記の3つの要素に沿って簡潔に文章を記載することが重要です。組織内のコミュニケーションの質を向上させることができ、結果的に自身の生産性向上へ繋がります。

このLessonでは営業関連職で利用するシーンが多い3つの報告書についてそれぞれ学んでいきましょう。

【日報】

日報を作成する目的は、日々の行動と成果を共有し、上司などからフィードバックをもらい、改善行動につなげることです。また、その日の成果が良かった場合、取り組み内容を共有することにも意味があります。

日報を作成する際のポイントを以下にまとめます。

・成果を具体的に記載する  ・数値や事実を使って成果を具体的に示す  ・目標やそれに対する進捗状況を記載する ・行動や結果に対する課題と改善策も明記する  ・その日の業務の結果から見えた課題や問題点を挙げる  ・その問題点に対する改善策や、次に行うべきアクションを明確にする

では、具体的な日報の例を見てみましょう。

営業日報

日付: 2024年6月10日

報告者: 田中太郎

1. 今日の成果
 新規契約件数: 3件
 ・株式会社A(契約額: ¥500,000)
  ・担当者: 佐藤様
  ・契約内容: SaaSサービス導入プラン
  ・決定理由: カスタマーサポートの評価

 ・株式会社B(契約額: ¥300,000)
  ・担当者: 鈴木様
  ・契約内容: クラウドストレージサービス
  ・決定理由: コストパフォーマンスの良さ

 ・株式会社C(契約額: ¥200,000)
  ・担当者: 高橋様
  ・契約内容: データ解析ツール
  ・決定理由: 使いやすさと導入の迅速さ

 アポ取得件数: 2件
 ・株式会社D(担当者: 山田様)
  ・アポ日程: 2024年6月12日

 ・株式会社E(担当者: 佐々木様)
  ・アポ日程: 2024年6月13日

2. 現在の進捗状況

今月の目標: 新規契約10件(進捗: 7件 / 10件)

売上目標: ¥2,000,000(進捗: ¥1,500,000 / ¥2,000,000)

・今週の目標: 新規契約3件(進捗: 3件 / 3件)
 ・現在の売上総額: ¥1,500,000
 ・内訳:
  ・新規: ¥1,000,000
  ・既存顧客の追加購入: ¥500,000

3. 課題と改善策
 ・課題1: 見込み客とのコミュニケーション不足による契約率低下
  ・詳細: フォローアップメールの返信率が低下
  ・改善策:
   ・フォローアップのタイミングを調整(週2回→週3回)
   ・各見込み客に合わせたカスタマイズ提案資料の作成

 ・課題2: 新規リード獲得のペースが遅い
  ・詳細: セミナーやネットワーキングイベントへの参加頻度が少ない
  ・改善策:
   ・月2回のセミナー参加を義務化
   ・SNSを活用したリードジェネレーションの強化

4. 明日の予定

6月11日:
9:00〜10:00: 社内ミーティング(営業戦略会議)
11:00〜12:00: 株式会社Fと打ち合わせ(商談資料準備済み)
13:00〜14:00: セミナー参加の準備
15:00〜16:00: 既存顧客フォローアップ(週次定期連絡)
17:00〜18:00: 日報作成とCRMシステム更新


【経緯報告書】

経緯報告書は、主に顧客とのトラブルが発生した際に作成する報告書です。経緯や対応内容を上司や関係部署に共有し、トラブルを解決するとともに、再発を防止するための打ち手を考えます。

もちろんトラブルが発生しないことが一番ですが、発生したトラブルに対していかに社内で情報共有をスムーズに行いながら解決に導くか、また、社内での再発防止を実施できるかは今後の顧客折衝において重要になります。

経緯報告書を作成する際のポイントを以下にまとめます。

・事実関係を正確に記載する  ・トラブル発生から現在までの経緯を時系列で整理して記載すること  ・推測や感情的な表現は避け、確認できた事実のみを記載する  ・可能な限り具体的な数字やデータを使用する ・原因と対策の明確化  ・トラブルの原因を明確に分析し、それに基づく具体的な対策を示す  ・今後の改善策として具体的かつ実行可能な内容を記載する

では、具体的な経緯報告書の例を見てみましょう。

経緯報告書

日付: 2024年6月10日

報告者: 田中太郎

宛先: 山田部長

株式会社Aとの契約トラブルに関する経緯報告書

1. トラブルの概要
・顧客名: 株式会社A
・担当者名: 鈴木一郎様
・発生日: 2024年6月5日
・トラブル内容: 提案した契約内容と実際の契約書内容に齟齬があり、顧客からの信頼を損なう事態となりました。

2. トラブル発生の経緯
2024年6月1日 14:00: 株式会社XYZの鈴木様と商談を実施し、クラウドサービスの提案を行いました。提案書にてサービス内容と料金を説明しました。

2024年6月2日 10:00: 鈴木様から提案内容に同意を得て、契約書を送付しました。

2024年6月4日 09:00: 鈴木様より、契約書の内容が提案書と一致していないとの指摘を受けました。特に料金とサービス範囲に関する部分で齟齬が発生していました。

2024年6月4日 10:00: 内部確認を実施し、提案書作成時に誤ったテンプレートを使用していたことを確認しました。

2024年6月4日 13:00: 鈴木様に謝罪し、正しい契約書を再送しました。

3. 原因分析
・技術的原因: 提案書作成時に誤ったテンプレートを使用し、料金とサービス範囲の記載に誤りが生じました。
・人的原因: 提案書の内容確認が不十分であり、チェック体制の不備が原因です。

4. 結果
・契約更新: 鈴木様に正しい契約書を再送し、契約内容の修正が完了しました。株式会社XYZとの契約は無事に締結されました。
・対応結果: 鈴木様には丁寧に謝罪し、再発防止策についても説明しました。ご理解とご納得をいただきました。

5. 今後の改善策
・プロセス改善:
 ・提案書作成時に使用するテンプレートの一元管理を徹底し、バージョン管理を強化します。
 ・提案書および契約書作成時の確認プロセスにおいて、二重チェック体制を導入します。


【月次報告】

月次報告の目的は、営業活動全体の進捗状況や成果を上司および関係部署に共有し、今後の戦略や改善点を明確にすることです。

組織全体で営業の方向性を一致させ、目標達成に向けた効率的な活動を促します。また、成功事例や課題を共有することで、他の営業担当者やチームにも有益な情報を提供することができ、組織全体のパフォーマンス向上が期待できます。

月次報告を作成する際のポイントを以下にまとめます。

・数値や事実を使って成果を具体的に示す  ・今月の全体的な振り返りを行い、全体の傾向やパターンを分析する  ・売上高、契約数、新規顧客数など、具体的な数値を使用して成果を示す  ・設定した目標とそれに対する進捗状況を報告する ・行動や結果に対する課題と改善策も明記する  ・達成できなかった目標の問題点を具体的に記載する  ・問題点に対する改善策や、次に行うべきアクションを明確にする ・次月に向けた戦略を明確にする  ・具体的な目標と、それを達成するための戦略を記載する

では、具体的な月次報告書の例を見てみましょう。

営業月次報告書

報告者: [名前]

報告日: 2024年6月12日

報告対象期間: 2024年5月1日〜2024年5月31日

1. 今月の成果
売上: 1,000万円(達成率:83%)
新規顧客数: 520社(達成率:87%)
新規商談数: 1600件(達成率:117%)

2. 売上分析
売上(目標): 1,200万円
売上(実績): 1,000万円
達成率: 83%

目標未達成の要因:
・新商品の発売遅延により一部顧客への納品が遅れ、売上が減少。
・主要顧客の一社が予算削減により購買量を減らした。
・新規顧客数の対目標ショートも要因となった。

3. 新規顧客数分析
新規顧客数(目標): 600社
新規顧客数(実績): 520社
達成率: 87%

目標未達成の要因:
・一部エリアでの競合他社の積極的な価格競争により、新規顧客の獲得が困難。
・新規顧客向けのキャンペーンの効果が予想よりも低かった。

4. 新規商談数分析
新規商談数(目標): 1370件
新規商談数(実績): 1600件
達成率: 117%

目標達成の要因:
・営業チームのメルマガ施策によるリード顧客の掘り起こしの実現。
・オンラインセミナーやウェビナーを通じた新規顧客との接触機会の増加。

5. 次月に向けた戦略
売上向上策:
・新商品のスムーズな発売と既存商品のプロモーション強化。
・主要顧客との定期的なコミュニケーションを図り、追加の購買を促進。

新規顧客獲得策:
・競合他社の価格戦略に対抗するための柔軟な価格設定とプロモーション。
・新規顧客向けのマーケティングキャンペーンの再構築とターゲティング精度の向上。

新規商談数増加策:
・リード顧客向けメルマガの定期配信。
・オンラインイベントの定期開催。

上記のようなテキストベースの報告書でも良いのですが、パワーポイントなどを活用して視覚的に情報を提示すると、より分かりやすくなります。

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