ここからはさらに上級編のプロンプトテクニックを学んでいきましょう。プロンプトエンジニアリングの応用における変数、コマンド、条件分岐の方法を学びます。これによって、更に詳細な指示ができたり、生成AI活用がより効率化されます。
重要テクニック① 変数
生成AIに指示する際に、毎回変わる要素を「変数」として差し替えられるようにプロンプトを書いておくことで、プロンプトをテンプレート化し、活用することができるようになります。
例えば以下のような例が挙げられます。
| タスク | 変数の例 | プロンプトの例 |
| 市場調査のリクエスト | {market}: 調査対象の市場(例:日本、北米など)。 {product_category}: 製品カテゴリ(例:消費者電子製品、化粧品など)。 {research_purpose}: 市場調査の目的(例:市場シェアの分析、競合調査など)。 | {market}市場における「{product_category}」カテゴリの製品について、{research_purpose}の目的で市場調査を行ってください。 |
| 営業提案書の作成 | {client_name}: 提案書を提出するクライアントの名前。 {service_offered}: 提案するサービスの種類(例:ITコンサルティング、マーケティング戦略など)。 {key_proposal_points}: 提案の核となるポイントや強み。 | {client_name}様向けに「{service_offered}」サービスを提供する提案書を作成してください。主なポイントは{key_proposal_points}です。 |
| 業績報告のリクエスト | {reporting_period}: 業績報告の対象期間(例:2023年第1四半期など)。 {department_name}: 業績報告を行う部門の名前(例:販売部、開発部など)。 {key_achievements}: 期間中の主な成果や成績のハイライト。 | {reporting_period}における{department_name}部門の業績報告を作成してください。主な成果には{key_achievements}が含まれます。 |
このように変数を設定することで、タスクごとにプロンプトをテンプレート化することができるようになります。
実際のプロンプトは以下のようになります。
| プロンプトの例 | # 役割 広報の担当者 # 命令 「{company_name}」の企業プロフィールを作成してください。 # 文脈 ホームページで企業の紹介文を作成したい #追加情報 創業は{founding_year}年で、主要製品には{main_products}があります。 # 出力指示 テキスト形式 # 変数 {company_name}: バイオレネックス {founding_year}: 2019 {main_products}: 糖尿病の薬「EternaLife Biotech」 |
もし別の企業プロフィールを作成したい場合は「#変数」の「:」以降の文言を修正します。
変数を使用することで、同じタスクに対して常に一貫した指示を与えることができ、生成AIから意図した出力を安定して得やすくなります。上記はあくまでも例ですが、変数を充実させたプロンプトをテンプレート化することで、実行の手軽さと意図した出力の双方を担保することができます。
さらに、変数を使用することで、同じプロンプトを異なる状況や要件に合わせて再利用できます。変数の値を変更するだけで、プロンプトの内容を簡単に適応させることができます。
変数を使用したプロンプトは、チーム内で共有や協力がしやすいのも特徴です。メンバー間でプロンプトの構造と変数の意味を共通理解することで、チームを通じて、効果的にタスク処理が可能になります。
重要テクニック② コマンド(実行プロセスの指示)
生成AIへの指示は、具体的であればあるほど有効に機能します。人間にお願いする場合は、事前に共通認識があったり、毎回1から指示する必要があるシーンは少ないかもしれません。
ですが生成AIは、大量の知識(データ)は学習していても、さまざまなタスクを実行する際の手順まで正確に学習しているわけではありません。少し手間のように感じてしまいますが、生成AIに思い通りの結果を生成させたい場合は、手順を1から詳細に指示することが効果的になります。
この手順を生成AIへ示す際に用いる方法を、[C1]や[①]、[手順①]のように順番がわかる記法します。「C」は「コマンド」を指します。コマンドは、生成AIが実行すべき具体的な手順やアクションを指示するもので、生成プロセスの一部として機能します。
ここでは例として小学生向けに生成AIについて説明する講演原稿を作成してもらうとしましょう。
| プロンプト | #前提条件 – あなたは生成AIの専門家である – ユーザーは生成AIの講師として小学校へ招かれている #ゴール 小学生へ生成AIについて講演を実施するための原稿を作成する。 #手順の実行プロセス [C1] 生成AIの特徴についてまとめる [C2] 生成AIの特徴を踏まえ、最適な利用シーンを複数個具体例として考える [C3] 上記の情報をまとめて講演原稿を作成する [C4] 上記の原稿を小学生が興味を持ちそうな内容と表現に修正する #出力形式 実行プロセスに従って出力 |
| ChatGPTの出力例 | ## 生成AIについて ### [C1] 生成AIの特徴 1. 柔軟性と汎用性: 生成AIはさまざまなタスクに適用できる柔軟性があります。文章生成、画像生成、音声生成など、様々な領域で活躍します。 2. 学習能力と進化: 生成AIは大量のデータから学習し、自己進化する能力を持っています。新しい情報やトレーニングデータを与えることで、より優れた成果を生み出すことができます。 3. 人間の学習を模倣: 生成AIは人間の学習や創造性を模倣することができます。例えば、文章を書いたり、絵を描いたりする能力を持っています。 4. 自動化と効率化: 生成AIはルーチンな作業を自動化し、効率化するのに役立ちます。これにより、人間がより創造的で重要なタスクに集中できるようになります。 ###[C2] 生成AIの利用シーン 1. 教育分野: 生成AIは教育分野で活用されています。例えば、教科書の要約や教材の作成、個別の学習サポートなどに利用されます。 2. クリエイティブな表現: 生成AIは詩や小説、音楽の作曲などのクリエイティブな表現にも活用されます。人間の感性とAIのアルゴリズムが融合し、新しい表現が生み出されます。 3. 医療分野: 生成AIは医療分野でも有用です。医療レポートの自動生成や画像診断の補助、薬の創薬などに応用されます。 4. エンターテイメント: 生成AIはエンターテイメント業界でも活躍しています。例えば、映画の特殊効果やゲームのキャラクターの生成などに利用されます。 ###[C3] 講演原稿 みなさん、こんにちは!今日は生成AIについてお話しします。生成AIは、人工知能の一種で、文章や画像、音声などを自動で生成することができるんです。 生成AIの特徴の一つは、柔軟性と汎用性です。つまり、さまざまなことをすることができるんですよ。例えば、教科書の要約をする、小説を書く、絵を描くなど、色んなことができるんです。 そして、生成AIは学習能力があります。たくさんのデータを与えると、それを学習して、自分で進化することができるんです。これによって、新しいことを学ぶことができたり、上手になったりすることができるんです。 また、生成AIは人間の学習を模倣することもできます。つまり、人間がやるようなことを真似て、同じようにすることができるんです。 生成AIは、教育の分野で活躍するだけでなく、クリエイティブな表現や医療分野、エンターテイメント業界でも活用されています。例えば、教科書の要約や映画の特殊効果、医療レポートの自動生成など、たくさんの場面で活躍しています。 ###[C4] 小学生向けの表現修正 みんな、こんにちは!今日はすごいAIについて話すよ!すごいAIって、文章や絵、音楽を自動で作れるんだよ! そのAIのすごいところは、なんでもできること!例えば、教科書を短くまとめてくれたり、物語を書いてくれたり、絵を描いてくれたりするんだ! それから、AIは勉強もできるんだよ!たくさんのデータを見て、勉強して、どんどん上手になっていくんだ! それに、AIは人間のまねもするんだ!人間がやるようなことを、同じようにやってみるんだ! AIは学校の勉強だけじゃなくて、楽しい絵を描いたり、映画を作ったり、病気を治したりするのにも使われてるんだよ!みんなも使ってみたいかな? |
このように手順を指示することで、生成AIが思い通りにタスクを実行してくれるようになります。
重要テクニック③ 条件分岐(例外処理の適用)
条件分岐とは、「もしAならBを実行し、もしCならDを実行する」という方法です。このテクニックを使うことで、異なる状況に応じてタスクの内容を柔軟に変えることができます。たとえば、ある条件が満たされた場合には特定のデータ分析を行い、それ以外の状況では別のアクションを指示することが可能です。これにより、様々なシナリオに対応できるプロンプトを作成できます。
以下はとあるお酢の商品に対する顧客の声を分析させ、高評価の場合と低評価の場合で、指示を分岐している例です。
| プロンプト | 顧客の声を分析し、満足度が高いのか低いのか、総合評価をしてください。満足度が低い場合、改善のための戦略を概説してください。高評価が多い場合、さらに事業成長するための方法を提案してください。 #顧客の声 「このお酢、毎日飲んでるけど、体調がすごく良くなったよ。元気が出るし、肌の調子もいい感じ。続けていこうと思う。」 「効果を感じられるし、値段も手頃だから、コスパもいいと思う。これからも愛用していくつもり。」 「お酢の健康効果について調べてみて、本当にいろんな効能があるんだなと感動した。これからも続けて健康をサポートしていきたい。」 「飲み始めてから体調が悪化した。こんなに副作用があるなら使い続けるのはやめよう。」 「効果を感じられず、値段が高い割には満足できなかった。もっと他の商品を試してみようと思う。」 「期待していたほどの効果はなかった。もっと効き目のある商品を探すつもりだ。」 「使ってみたけど、特に変化は感じられなかったな。もう少し時間をかけて続けてみるか検討しようと思う。」 「味は少し苦手だけど、効果を期待して続けている。もし他の味の選択肢があればいいなと思う。」 「効果にはまだわからないけど、続けてみる価値はあると思う。健康のために頑張ろう。」 「初めてお酢を飲んでみたけど、予想以上に飲みやすくて驚いた。健康的な習慣を続けるために、これからも利用していきたい。」 「お酢を飲み始めてから、身体が軽くなった気がする。これからも続けていきたい。」 「効果があると聞いて期待していたけど、まだ効果を感じるまでに時間がかかりそうだ。根気よく続けてみよう。」 「お酢を飲み始めたら、消化が良くなった気がする。これからも健康のために続けていこう。」 「お酢の効果を実感しているので、友人にも勧めています。みんなも試してみる価値はあると思いますよ。」 「効果が出るまでには時間がかかったけど、続けていて良かったと思う。健康のためにこれからも続けていくつもりだ。」 「このお酢、体調管理に本当に効果的だと思う。健康志向の方には特にオススメしたい。」 「お酢の味が好きで続けている。健康にも良いし、毎日の生活に取り入れるのが楽しみだ。」 「お酢の健康効果について調べてみて驚いた。これからも続けて健康をサポートしていきたい。」 「体調が良くなった気がするし、お酢を続ける価値はあると思う。」 「まだ効果を実感していないけど、続けてみる価値はあると思う。健康のために頑張ろう。」 「味は少し苦手だけど、健康のために続ける価値はあると思う。」 |
| ChatGPTの出力例 | 顧客の声を分析すると、多くの顧客がお酢の健康効果に満足していることが分かります。特に、体調が良くなったと感じている顧客が多いです。一方で、味が苦手であると感じている顧客や、効果を感じられないという意見も存在します。 これらの声を総合的に評価すると、全体としての満足度は高めですが、いくつかの改善点も見受けられます。特に、味の改善や、効果を感じるまでの時間がかかる点が挙げられます。 事業成長のための提案として、以下の方法を検討してみてはいかがでしょうか。 製品ラインの拡張: 味が苦手と感じる顧客に対応するために、異なるフレーバーや味わいのお酢を開発することが効果的です。例えば、フルーツフレーバーのお酢や甘みを加えたバリエーションを提供することで、より多くの顧客層を引きつけることができます。 教育的マーケティングの強化: お酢の健康効果をもっと明確に伝える教育的なマーケティングを強化することで、顧客の期待管理を助け、効果を実感できないという意見を減らすことが可能です。効果が出るまでの時間や、どのような健康効果が期待できるかを具体的に説明することが重要です。 顧客フィードバックの活用: 定期的な顧客調査を実施し、製品に対するフィードバックを積極的に収集すること。これにより、顧客のニーズに応じた製品改良を行うことができ、さらに顧客満足度を向上させることができます。 コミュニティビルディング: お酢を使った健康法に興味がある人々が情報を共有し、サポートし合えるオンラインのコミュニティやフォーラムを作成する。これにより、顧客間の交流を促進し、製品への興味やロイヤルティを高めることが期待できます。 新たな販売チャネルの開拓: オンライン販売の強化や、健康食品店、スーパーマーケットといった新しい販売チャネルへの進出を図ることで、より多くの顧客に製品を届けることができます。 これらの戦略を通じて、さらなる事業成長を目指すことができるでしょう。 |
今回の例だと、高評価が多かったので「事業成長のための提案」を生成AIが行いました。条件などを明確に考え、プロンプトに入れることで、分析系のタスクなどに応用が可能です。

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